[受験特集]看護学部入試のポイント
メディカルスタッフを目指す人の受験専門校 京都看護医療予備校学院長が入試のポイントを紹介!
2019年度 看護学部入試のポイント Vol.2
みなさんこんにちは京都看護医療予備校の小田です。前回は看護学部を取り巻く入試環境について述べましたが、2回目となる今回は大学と専門学校との相違について詳細に解説していきましょう。近年、看護教育の高度化と高学歴志向という視点から全国的に国公立大学はもちろんのこと、私立の看護大学(看護学部・学科)がたくさん誕生しています。
※厚生労働省学校基本調査データ、及び日本看護系大学協議会資料より京都看護医療予備校で調査作成
看護系大学や看護学部がこの15年超で数多く開学や新規に設置(2018年4月現在265大学)されたことで看護師になりたいと切望する受験生の受け皿となりました。大学が増加した理由のひとつに高度医療に伴う高度看護ケアがあげられます。専門学校では学ぶことのできない看護専門知識の習得は受験生に意識改革(高度看護ケアの必要性)と意欲(高度看護ケアの知識を学びたい)を与える結果となり現在の高倍率の原因になっています。いずれにせよ『看護』、とりわけ大学という恵まれた教育環境で『看護』を享受したいと考えることは自然な流れでもあり、社会のニーズだと言えるでしょう。近年、看護教育の高度化と高学歴志向という視点から全国的に国公立大学はもちろんのこと、私立の看護大学(看護学部・学科)がたくさん誕生しました。看護系大学の修業年限は4年であり、設置者は国立・公立・私立系となり、その監督官庁は文部科学省と定められています。一般的な看護専門学校(3年制で厚労省管轄➡一部の専門学校は4年制)と違い、これら4年制大学では教養科目の充実はもちろん、臨床現場で活躍する質の高い看護職を養成するのみならず、将来の看護教員や看護の臨床指導者を育成するカリキュラムまでもが充実しており、クオリティの高い看護理論教育や看護技術教育の実践を主目的としています。このあたりは専門学校ではなかなか享受することのできないカリキュラム体系といえるでしょう。次年度から文部科学省が専門職大学の設置認可を認めており、2018年5月時点で看護・医療系では10数校が申請中です。
例えば、専門学校の時間割、とりわけ座学の授業では、クラス全員が同じ授業を受けることになりますが、大学では、「私は一時間目に人間関係論を受講しよう」、「私は一時間目、他学部共通科目の異文化コミュニケーション論を学ぼう」など個々の授業選択の幅の広さも魅力のひとつです。また早期にゼミに帰属して、自己の興味のある看護領域を高度な専門性をもって学習・研究できるのも大学ならではです。
平成21年に第171回通常国会で可決・改正された『保健師助産師看護師法』によるところが大きく起因しているといえるでしょう。 これはわが国の看護教育のベクトル(方向)を位置づけしたもので少し難しくなりますが主なポイントとその動向は以下の通りです。
- 看護師国家試験の受験資格として4年制を明記。(保助看法第21条)
簡単にいえば大学で4年間学ぶことにより従来の統合カリキュラムで受験資格を与えられていた保健師の国家試験受験資格はカリキュラムの選択制となり、大半の学生が受けるカリキュラムは看護師国家試験の受験資格に限定されることとなりました。(保健師及び助産師カリキュラムは選択制で大学によりその定員は様々) - 保健師・助産師のカリキュラムが6ヵ月から1年以上へと延長された。(保助看法第19条,21条)
教育期間延長もあり平成24年には既に助産師教育を実施する大学院の数は21(総定員224人)にもなった経緯もあり今後もさらに増加傾向です。 - 卒後臨床研修が努力義務化(保助看法第28条)
これは大学卒に限らず専門学校卒であっても同じで、同時に改正された『看護師等の人材確保の促進に関する法律』により就職先の病院における研修責任を強めたものであり、受験生のみなさんはこの法律の名称を知っているくらいで充分です。
看護系大学の教育環境は上述のように大きく変革期を迎えてから久しくなり大学によってとても差別化されたカリキュラムも見受けられます。8年前までの旧カリキュラムでは大学へ行けば全員が看護師国家試験だけではなく、保健師国家試験の受験資格も与えられていました(すべての大学が統合カリキュラム)。
さらに選択者には助産師国家試験の受験資格まで与えられ、学生によっては看護師・保健師・助産師と三つのライセンスを取得することが可能な時代もありました。しかしながら現在は、大半の学生が看護師資格に向けて4年間を過ごすこととなり、各大学ではより魅力的なカリキュラムを設置しています。さらに詳しく述べると看護系大学の卒業要件として保健師カリキュラムは必須ではなくなり、保健師教育を実施するか否かは各大学独自で決定可能なものとなり平成23年度入学生より北海道大学、東京大学、大分県立大学などでは4年間全員が看護教育のみの履修となるところも増加傾向です。また、文部科学省において平成28年設置の「大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会」において、大学の学士課程における看護師養成教育の充実と社会に対する質保証に資するための「看護教育モデル・コア・カリキュラム」の策定が進められてきましたが、平成29年10月「看護学教育モデル・コア・カリキュラム」が本格策定され公表に至りました。それは看護系大学の急激な増加により、教育レベルの維持向上が課題となり、さらには地域包括ケアシステムの構築、多職種連携・チーム医療の推進など、さらなる医療安全の要請等の社会の変化に対応し、看護師として必要となる能力を備えた質の高い人材養成が可能となる教育モデルとなっており、今後大学における看護教育(学士課程教育)の拡充に期待したいところです。また平成24年4月入学者から保健師教育の延長の一環により地域看護学⇒公衆衛生学へ学習する内容にも変更が加えられ必要単位も23単位⇒28単位へと5単位増加しています。(同じく助産師カリキュラムも23単位⇒28単位へと5単位増加)
このように大学における看護教育は他学部と違い、大きくカリキュラムの変更がなされています。仮に4年間看護のみを学習するのであればより専門性が高い講座があったり、魅力的な講座やゼミ担当の教授がいるなど、さらにはキャリア教育や大学院教育が充実していたりと自分自身が魅力的に映る大学を是非探してみてください。そのためには様々な大学へ自ら赴(おもむ)き、オープンキャンパスへ参加して大学の先生方や在学生たちから情報をたくさん集めることをしてみてください。いろんなお話を聞かせて頂けることでしょう。また教育設備の充実度や実習病院(大学によっては母体病院を有している)の環境も大切な選択要素のひとつです。後々後悔しない受験のために是非とも積極的な行動で第一志望の大学を早く見つけてください。そのためにもこの『看護学部へ行こう』に掲載されている大学のオープンキャンパスへ参加することをお勧めいたします。
自分自身が大学に行くのであれば国公立なのか私立なのか、さらにはどのスタイル(AO・推薦(公募・指定校)・社会人・一般入試)で入試に臨むのかできる限り早期に決定し受験対策をしっかりと立てていくことが重要です。そのために様々な学校のオープンキャンパスなどに参加して情報収集をしていくことは何より大切です。またできる限り評定平均を上げ、欠席日数を増やさない健康的な生活を送ることも医療者をめざす皆さんにとって大変重要なことです。